“捨てる力”が人生を変える。

カジノのゲームは、「捨てる」「止める」「続ける」の決断の連続です。
実はこの感覚、人生の選択や日常の整理術にも通じるものがあります。
私がジャズピアノの師匠・Eさんから学んだ“捨て活”の哲学は、
ポーカーやブラックジャックの戦略とリンクしていました。
今回は、Eさんとの再会と「捨てる力」から得た気づきを綴ります。
昔(といっても20代)、私はジャズピアノをやっていた。
ジャズの出会いは高校時代に遡る。
それまで弾くピアノはクラシックかポップス一辺倒。
そんな私に衝撃を与えたのが、偶然耳にしたチック・コリアの『スペイン』だった。
「なんだこの民族的ともジャズともいえぬ、かっこいい曲は!」
その瞬間、クラシックに固執する必要はないと感じた。
かといって、難解なジャズコードを急に覚えたわけではない。
ただ、ガチガチのルールだらけのクラシックから離れ、当時よく聴いていた洋楽を弾くようになった。
社会人になってからは弾き語りをするようになり、
「洋楽を歌えるようなピアノアレンジをしたい」
という思いからコードの世界に足を踏み入れた。
そこで出会ったのがジャズピアノ講師のEさん。
同じ関西出身ということもあり、すぐに打ち解けた。
レッスン以外でもご自宅に招かれ、元旦那様の美味しい手料理をご馳走になったこともあった。
中国に渡ってからも、ピアノは私の生活の一部だった。
ユニット、バンド、ビッグバンド……多国籍な仲間たちと音楽を奏でる時間はかけがえのないものだった。
しかし、カジノのことや育児に追われるようになり、ここ数年は人前で演奏することが減っていた。
そんな折、昔から懇意にしているジャズバーのマスターから
「バンドのコーラスやらない?」
と誘われた。即答で「はい」と答え、メンバーに加わることになった。
キーボードを担当する可能性も出てきたことで、ふとEさんを思い出した。
何気なくネットでEさんの名前を検索して、目を疑った。
「捨て活」(人生を好転させるために“捨てる”活動)のインフルエンサーになっていて、YouTubeのフォロワー数は数万人。
しかも初年度から年商億を突破する会社を経営しているという。
何より驚いたのは、
「ピアノ講師と元旦那も捨てた」
という言葉だった。
あれほど大事にしていたピアノを……?旦那さんとの仲の良さも間近で何度も感じていたのに。
訳がわからず、いても立ってもいられず、YouTubeを観られるだけ観て、その日のうちにメールを送った。
ただし、今のEさんにとって私は過去の存在。
重荷になるかもしれないと思い、返信はいらないと添えた。
Eさんの教えどおり、彼女はきっと「秒で判断」し、メールも削除するだろうと予想しながら。
それでも「何があったのか知りたい。Eさんに会いたい」と思い、Eさん主宰の「お茶会」に申し込んだ。
会場には数十人の参加者と講師たち。
みなそれぞれに「夫から自立したい」「自分のマインドを変えたい」という思いを抱えていた。
Eさんと会うのは15年ぶりだ。
昔を知る者は私しかいないようで、浮いていたかもしれない。そもそもの動機も違う。
しかし、みな口をそろえて言った。
「昔のEさんを知っているなんて、うらやましい」
私は勢いで「捨て活自慢大会」にも参加し、なんと2位入賞までしてしまった(ちなみに捨てたのは“日本在住”という生き方)。

久々に会ったEさんは、昔と変わらない笑顔の中に、しがらみを振り切った自信と充実感が見えた。(送ったメールは“捨てられた”のではなく届いていないだけだった)

改めて思う。「捨てる」というのは奥深い。
iPhoneだって、無駄を徹底的に捨てたからこそ、あのシンプルなフォルムと機能が生まれた。
何かを得るには、まず何かを捨てる必要がある。
Eさんは服でも何でも「8割を捨てる」と提唱している。
私もネット上で再び彼女と邂逅してから、少しずつ捨て始めた。
化粧台から毎日1つ、何かを捨てるのが日課になった。
捨てることで「決断力」と「本当に必要なものを見極める力」が磨かれていく。
考えてみれば、カジノのゲームもそうだ。
ポーカーもブラックジャックも、「捨てるか、止めるか、続けるか」の連続判断。
日々ゲームと向き合うプレイヤーは、知らないうちに「捨てる力」を鍛えているのかもしれない。
捨てる勇気が未来を変える。
そして今、私もカジノや人生の選択の中で、その力を試している。